日本透析医学会雑誌
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透析患者の冠動脈造影とインターベンション治療
基礎疾患に関する検討
杉本 徳一郎大本 由樹多川 斉齋藤 肇長田 太助原 和弘田村 勤
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1996 年 29 巻 7 号 p. 1139-1142

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抄録

1995年3月までに, 冠動脈造影を施行した透析患者143例のうち, 冠動脈に有意狭窄を有した患者は108例, 有意狭窄病変のない0枝病変の患者は35例であった. 有意狭窄病変を有する患者の基礎疾患は, 慢性腎炎33%, 糖尿病性腎症42%, 腎硬化症17%, その他7%であり, 透析患者一般に比べて糖尿病性腎症と腎硬化症の頻度が高かった. 腎硬化症の患者は, 慢性腎炎, 糖尿病性腎症の患者より高齢であった. 透析期間は, 慢性腎炎の6.1年に比べて, 糖尿病性腎症では2.3年, 腎硬化症では1.3年と有意に短かった. すなわち糖尿病性腎症および腎硬化症による透析患者は虚血性心疾患を合併する頻度が高く, 透析導入期にすでに有意狭窄を合併する症例が多いことが示された. また糖尿病性腎症と腎硬化症では, 3枝病変や左冠動脈主幹部病変などの高度病変が多い傾向がみられた. 有意狭窄病変を有する患者に対して, 原則として1-2枝病変にはPTCAを, 3枝または左冠動脈病変にはCABGを選択した. しかし, 冠動脈石灰化や動脈硬化性合併症などのため, やむを得ず薬物療法を選択する症例もあった.

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© 社団法人 日本透析医学会
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