日本透析医学会雑誌
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腹膜透析から血液透析に移行後に発症した硬化性腹膜炎の1例
堀井 昭村上 円人緒方 優美渡辺 摩也中井 久雄高品 尚哉工藤 清士坂本 吉成斎藤 直美森谷 洋子
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1997 年 30 巻 1 号 p. 75-79

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抄録

症例は60歳, 男性. 1987年11月, 慢性糸球体腎炎による慢性腎不全のため腹膜透析 (CAPD) に導入された. CAPD施行中に腹膜炎を4回繰り返した. 1994年4月, CAPDの効率低下によると思われる全身浮腫, 意識障害を呈したため血液透析 (HD) に変更, 症状は改善した. 同年10月, 腹痛, 腹部膨満感が出現し持続した. 1995年1月より嘔吐を繰り返すようになり, 同年1月13日, 当院に入院した. 腹部は膨隆し波動を触知したが, その他に特記すべき異常所見を認めなかった. 腹部の単純X線, CTではニボー形成, 著明な腹水, 腹膜の肥厚を伴う一塊となった腸管がみられた. 腹水は血性, 浸出性で細胞診はclass IIであった. 硬化性腹膜炎と診断し, 3か月に亘り禁食, 高カロリー輸液を続けたが, 次第に全身状態が悪化し死亡した. 本症の発生頻度は低いが, 栄養状態の不良より死亡する確率は高い. 長期に亘るCAPDの合併症として本症は再認識されるべき疾患である.

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