日本透析医学会雑誌
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Nafamostat mesilateにより著明な好酸球増多をきたした血液透析患者の1例
斎藤 修草野 英二赤井 洋一本間 寿美子安藤 康宏田部井 薫浅野 泰
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1997 年 30 巻 3 号 p. 205-210

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抄録

透析患者に特異的な好酸球増多症として, これまでに透析膜や滅菌法に起因する報告がされてきた. しかし, これら以外にも透析患者における原因不明の好酸球増多症が現在でも多くみられる. 近年抗凝固薬による好酸球増多症も散見され, いずれも高度な好酸球増多が見られているが, 経時的変化や機序についての検討は未だなされていない.
今回我々は, 膜性増殖性糸球体腎炎から慢性腎不全に陥った患者で, 導入期に末梢好酸球数13000/μlに達する好酸球増多症を経験した. 原因検索をしたところ抗凝固薬として使用したnafamostat mesilate (フサン®; FUT) による好酸球増多症の可能性が強く疑われ, 同薬剤に対する好酸球増多の経時的変化と血液透析との関連性, およびサイトカイン (IL-2, IL-3) に関する検討を行った. その結果, 本症例で見られたFUTによる好酸球増多症は遅延型アレルギー反応の発症形式を呈し, 指数関数的増加を示した. また, 本症例ではFUTによる透析を施行してもIL-2, 3の産生亢進は認められず, IL-2反応試験ではむしろ低値を示した. 以上のことから, FUTによる好酸球増多症の原因としてはIL-2, 3の関与は否定的で, 他の要因が関与する可能性が示唆された.

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© 社団法人 日本透析医学会
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