日本透析医学会雑誌
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腸管壁の石灰化に著明な代謝性アルカローシスが合併したCAPD患者の1例
塩田 潤島田 憲明窪田 実伊藤 浩二中村 雄二二瓶 英人家崎 貴文嶋田 哲二羽鳥 浩山口 隆大井 宏夫
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1997 年 30 巻 5 号 p. 329-333

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抄録

症例は29歳, 男性で, 神経因性膀胱のため25歳時, BUN 138.1mg/dl, Cr 16.4mg/dl, Na 138mEq/l, K 3.4mEq/l, Cl 100mEq/l, c-Ca 6.0mg/dl, iP 12.7mg/dl, intact-PTH 1540pg/ml, pH 7.166, HCO3-8.3mEq/lの状態でCAPD導入どなった. 二次性副甲状腺機能亢進症に対して1α(OH)D3 0.5μg/dayおよびCaCO3 3g/dayが投与され約3か月間でintact-PTH 603pg/mlまで改善した. CAPD開始後1年間に計4回の遷延性腹膜炎に罹患後, 腹痛, 嘔吐, 血性排液が出現した. 以後計3回腹膜炎に罹患し, 除水能低下および残腎機能消失のため血液透析に移行した直後より関節および皮膚に異所性石灰化が出現し, その後高度な代謝性アルカローシスをきたした. 無尿状態であり習慣性嘔吐や下痢および内分泌異常もないためアルカローシスの原因は, CT上著明な腸管壁全層の石灰化を認めた点から, 腸管粘膜におけるHCO3-分泌障害と考えられた.
本症例の病態は既報のcalcifying peritonitisあるいはperitoneal calcificationに極似しており, 誘因として遷延性腹膜炎時の高濃度透析液使用およびビタミンD過剰投与が考えられた. 本症への対応は腹膜透析の中止に加えて石灰化の予防と代謝性アルカローシスの対症療法である. 胃酸分泌抑制はアルカローシス改善に有効であったが, なお長期的な経過観察を要すると考えられた.

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