日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
透析患者におけるcarnitineとその補充による脂質代謝への影響
透析量の異なる2病院での検討
堀江 正宣長谷川 正広土屋 博伊藤 慎一山羽 正義篠田 孝加藤 〓郎中村 豊河村 毅西田 泰幸林 秀治米田 尚生河田 幸道
著者情報
キーワード: 透析量, 過酸化脂質
ジャーナル フリー

1998 年 31 巻 11 号 p. 1373-1378

詳細
抄録

一般に透析療法でcarnitine (β hydroxy-γ-trimethylamino butyric acid) は低下するといわれている. 透析量の異なる2病院間 (A病院: Kt/V; 1.67, n=13, B病院: Kt/V; 2.24, n=24) で, 血中carnitine濃度を測定し, 1回の透析でのcarnitineの除去量およびCarni-Rihen 500 “KM”™ (L-carnitineTM) 補充 (L-carnitine 1,000-500mg/日) による血中carnitine levelと脂質代謝への影響を検討した. A病院のtotal carnitine (TC) は43.5μmol/l, B病院のTCは37.0μmol/lで, acyl carnitineとfree carnitine比 (AC/FC ratio) はA病院で0.7から0.6に, B病院は1.0から0.6とわずかな改善を示した. また, HD後のTCは約70-90%が除去されていた. 1週間の排液中のTCは847.0±68.4mg, FC 570.0±48.8mg, AC 351.0±25.9mgであった.
A病院でのL-carnitineTMの補充による脂質代謝の検討では, 500mg/日の投与ではacyl moietiesの増加によりかえってTG, VLDL, LDL, HDLは増加しアポ蛋白には変化を認めなかった. また, L-carnitineTMの補充によりMDA-LDLは有意に低下したがOX-LDLの改善には有意差を認めず, L-carnitineTMの抗酸化作用は弱く, 投与量によってはむしろ脂質代謝に悪影響を及ぼすことが示唆された. B病院での排液中の濃度とAC/FC ratioの改善度より, LcarnitlneTMの適正補充量は隔日投与で1日500mg程度が望ましいと考えられたが, 今回の検討ではL-carnitineTMの抗酸化作用は弱いものと考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top