日本透析医学会雑誌
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透析患者の動脈硬化評価法
頸動脈硬化度と大動脈石灰化係数の比較
滝沢 英毅浦 信行米倉 修二吉田 茂夫渡井 幾男島本 和明
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1998 年 31 巻 12 号 p. 1431-1435

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抄録

動脈硬化評価法として頻用される大動脈石灰化係数と頸動脈硬化度を比較し, 透析患者における動脈硬化進展因子の解析とこれら評価法の有用性について検討した. 対象は透析導入前よりの動脈硬化進展を考慮し, 糖尿病性腎症および腎硬化症を除く維持透析患者41例 (男性21例, 女性20例, 年齢53±1歳, 透析期間14±1年). 頸動脈エコーにより評価した頸動脈硬化度 (0°-4°) と腹部大動脈CTから算出した大動脈石灰化係数を測定し, 動脈硬化に影響すると考えられる諸因子 (性別, 年齢, 透析期間, 血圧, 喫煙, 血清脂質, Ca・Pi代謝) との関連を重回帰分析で検討した. 頸動脈硬化度と大動脈石灰化係数は正に相関した (ρ=0.484, p<0.01) が, 重回帰分析 (R2値0.665, p<0.0001) では, 男性, 年齢, 収縮期血圧値および透析期間が独立した頸動脈硬化度の説明因子として示された. 一方, 大動脈石灰化係数は重回帰分析で採択される説明変数はなかった. 以上より, 頸動脈硬化度は血圧値と密接に関連し, 臨床的により有用な動脈硬化評価法であると考えられた. さらに, 透析療法の継続あるいは腎不全状態の長期化が, 動脈硬化を進展させ得ることを意味すると考えられた.

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© 社団法人 日本透析医学会
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