日本透析医学会雑誌
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重炭酸過剰摂取による代謝性アルカローシス, 睡眠時無呼吸および高血圧を認めた維持血液透析患者の1例
井上 勉岡田 浩一高平 修二中元 秀友菅原 壮一鈴木 洋通
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1998 年 31 巻 12 号 p. 1465-1469

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抄録

55歳, 男性. 主訴は早朝頭痛. 平成6年10月, 詳細不明のネフローゼ症候群を伴う慢性腎不全のため維持血液透析導入. 平成8年6月より早朝に激しい頭痛を訴えることがあった. また同時期に高血圧の進行を認め, 降圧剤の増量を要した. 頭痛出現時, 透析前に原因不明の代謝性アルカローシスおよび低換気所見を認めた. 平成9年7月頭痛の増悪をみたため原因精査のため入院した. 入院時, 心電図・呼吸モニターにおいて睡眠時無呼吸が頻回記録された. 入院後, 代謝性アルカローシスは次第に改善, 睡眠時無呼吸の減少に伴い頭痛の訴えが減少した. 家族の話より市販の制酸剤の過剰服用が明らかとなり, 同薬剤に含まれる重炭酸の過剰負荷が代謝性アルカローシスの原因と考えられた. その後代謝性アルカローシスは認められず, 頭痛のエピソードは直ちに消失したが, 血圧は約1か月の経過で徐々に低下した.
本症例は重炭酸の過剰摂取と腎不全による重炭酸排泄障害によって代謝性アルカローシスとなり, 呼吸抑制・二酸化炭素貯留を招き, 早朝頭痛が生じたと考えられた. また, 睡眠時無呼吸は交感神経系の持続的亢進をきたし, 血圧上昇をもたらしたものと考えられた. 従来より慢性腎不全患者は, 睡眠時無呼吸症候群のハイリスクグループであり, その診断と適切な処置は重要である.

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