日本透析医学会雑誌
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慢性腎不全血液透析患者におけるangiotensin converting enzyme (ACE) 遺伝子多型性についての検討
透析歴, 臨床学的背景との関連について
齋木 豊徳
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1998 年 31 巻 4 号 p. 267-272

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抄録

当院を含む関連5施設の血液透析 (HD) 患者120名を対象とし, 末梢血リンパ球よりDNAを抽出しpolymerase chain reaction (PCR) を用いてACE遺伝子多型性を検索し, 健常者と比較検討した. またACE genotype別に分類し, 年齢, 透析期間, 血液検査成績の観点から検討した.
結果は健常人と比較するとACE genotypeでは, HD患者Deletion/Deletion (D/D) 多型が有意に多く, Insertion/Insertion (I/I) typeが少なかった. またD Alleleが有意に多く, I Alleleが有意に少なかった.
HD 10年未満群 (以下<10群) とHD 10年以上群 (以下10≦群) の比較では, 血液検査値のみの多変量解析比較では最も有意差を示したのはKt/Vであった. また血液検査値ならびに遺伝子多型を加えた多変量解析比較で, Kt/V>I/Iの順に有意差を示した. またD/Dを含んだその他の血液検査値との比較検討ではいずれの検定においても有意差はみられなかった. このことは従来から危険因子といわれるD/Dは透析導入までには深く関与しているが, 導入後はD/Dであっても他の検討因子に透析期間別で有意差を認めない事実から長期透析が不可能であるとは考えにくかった. むしろKt/Vを高く保つことでD/Dであっても長期透析の可能性を考えさせられるものであり, D/Dよりも深く関与しているI/Iの存在が長期透析の可能性に重要な因子であることが示唆しえた.

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