日本透析医学会雑誌
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内シャント狭窄のPTAに際しparallel wire techniqueが有用であった2症例
堀田 祐紀田口 富雄伊藤 英樹斎藤 靖人坂本 和英石川 勲
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1998 年 31 巻 6 号 p. 1031-1037

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抄録

透析シャント狭窄に対するバルーンを用いた経皮的血管拡張術 (percutaneous transluminal angioplasty; PTA) の普及に伴い, 10-12気圧の通常バルーン拡張圧では十分に狭窄を解除し得ない高度硬化病変を経験する. これらの病変は拡張不十分のため, 比較的早期に再狭窄をきたし血流不全となり易い. 我々は, この高度硬化病変を十分に拡張する一手段として, 冠動脈形成術で時に使用されるparallel wire techniqueを導入した. この方法により十分な狭窄拡張に成功し, 長期間血流維持が可能であった2症例を経験したので報告する. 症例1はシャント音の減弱を自覚し血管造影が施行された. 端々吻合の静脈側に73% diameter stenosisを認めPTAを施行した. Balloon rated burst pressureの12気圧の拡張でもballoon indentationが残存し, シース挿入時に用いたガイドワイヤーを使用してparallel wire techniqueを行ったところindentationは解除され十分な拡張に成功した. 症例2は, 透析時血流<120ml/min. と低下したためシャント造影が施行され, 端側吻合の静脈側に85% diameter stenosisの比較的長い狭窄病変を認めた. PTAを施行するも12気圧で拡張不十分であり, 症例1と同様のparallel wire techniqueを用いて拡張を行った. 10気圧でindentationは消失し, 十分な拡張に成功した. 以後2症例ともに長期間再狭窄を認めず, 十分な透析時血流維持が可能であった. 透析シャント狭窄に対するPTAに際し, 通常拡張圧で十分に狭窄の解除ができない高度硬化病変の拡張にparallel wire techniqueは有用な一手段と考えられた. また同手技は, PTA拡張部の再狭窄を軽減し得る可能性が示唆された.

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