日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
Study of the causes of recombinant human erythropoietin (rHuEPO)-derived hypertension in patients with chronic renal failure
Shinya NakamuraChao Long YangKaori NakayamaMasato KayamaKoshin AdachiTerunori MitsumaHiroaki AsadaShuichi TsutsuiMotoyuki IshiguroHiroshige OhashiYouko Niwamoto
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 31 巻 9 号 p. 1251-1257

詳細
抄録

rHuEPO (EPO) 投与の副作用には高血圧症がある. その成因の一つには貧血の改善による血液粘稠度の亢進があげられる. 今回, 我々はEPO投与直後ならば赤血球数の増加はないであろうという想定で本薬剤の昇圧作用の検討を行った. 対象は透析患者29名, 慢性腎不全保存期患者15名の2群. 生食でEpoetin-βを溶解し, 前者に3,000U, 後者に6,000U (総量2.0ml) を静注し, その前後で血圧測定と採血を行った. なお持続性降圧剤は前日夜から, 通常の降圧剤は当日早朝中止させ, 仰臥位で安静60分後に開始し, さらに60分安静をとらせた. なお対照は全く同じ方法で生食2.0mlを静注した.
また血圧測定のほか, 前後でnoradrenaline, adrenaline, aldosterone, reninなどの昇圧物質やendothelin-1 (ET-1) の採血を行った. 結果: 末梢血液所見は2群ともまたその対照群でも, 予想通り前後間で全く変動がなかった. 血圧 (前, 30, 60分; mmHg) は透析群142.7/76.5, 145.1/78.6, 150.9 (p<0.05)/79.5. 保存期群139.5/74.8, 147.5/83.2 (p<0.05), 154.3 (p<0.005)/85.1 (p<0.005), 平均血圧 (前, 後) は透析群98.6, 103.3, 保存期群96.3, 108.1 (p<0.005) であった. なお対照群では全く上昇しなかった. ET-1は透析群 (前vs後) で15.4±3.5 vs 18.1±4.2pg/ml, 保存期群でも13.7±4.3 vs 16.3±4.4pg/mlと上昇した (p<0.05). 両対照群は前, 後間で全く変動しなかった. また昇圧物質は前後で2群とも, またその両対照群でも上昇がなかった. EPO投与により60分後に血圧とET-1の上昇をみたが, この血圧上昇の成因には, 一般に考えられている貧血の改善の関与は少なく, むしろ本薬剤の直接作用かET-1の関与が想定される.

著者関連情報
© The Japanese Society for Dialysis Therapy
前の記事 次の記事
feedback
Top