日本透析医学会雑誌
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パーキンソン・クリーゼをきたした慢性血液透析患者の1例 -Levodopa中断後の悪性症候群-
湯浅 健司蘆田 真吾岡 夏生増田 秀作山本 晶弘寺尾 尚民
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1999 年 32 巻 1 号 p. 45-48

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抄録

症例: 82歳, 男性. 慢性糸球体腎炎による腎不全にて1992年9月血液透析に導入. 1996年12月末より食欲不振が続き, 1997年1月16日歩行困難, 発熱, 経口摂取不可, 意識レベル低下したため入院となった. 胸部X-Pにて肺炎と診断し, 抗生物質投与と全身管理を行った. WBC 8,200, CRP 8.9mg/dl, CKが538IU/lと軽度上昇認めた. 頭部CTに異常はなかった. 1月17日LDH 737IU/l, CK 1,467IU/l, CRP 8.3mg/dlと, CKの著明な増加を認めた. ECG, 心エコーに心筋梗塞の所見はなかった. 1月20日, CK 109IU/lと正常化. 1月22日, 呼びかけに開眼する程度の意識状態であった. 患者は1991年より近医にてパーキンソン病にてlevodopa/carbidopa合剤を服用していたが, 入院1週間前より, levodopa製剤を服用していなかった. 意識障害, 発熱, 高CK血症からドーパミン中止による悪性症候群を考え, levodopa/carbidopa合剤の経口投与を開始した. 次第に意識レベルは上昇し, 2月末には入院前の状態に近いところまで回復した.
パーキンソン・クリーゼの誘因として, (1) 抗パーキンソン病薬の中断 (2) 肺炎 (3) 低栄養状態が考えられた. 治療としては, 全身状態の改善はもちろんのこと, 極期においてもlevodopa製剤は可能な限り継続することが肝要と考えられた.

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