日本透析医学会雑誌
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維持透析患者の多臓器不全合併症例と急性多臓器不全症例の比較検討
浅木森 幸晃川西 秀樹勝谷 昌平倉恒 正利崎久保 悦男森石 みさき土谷 晋一郎頼岡 徳在
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1999 年 32 巻 11 号 p. 1391-1396

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抄録

維持透析患者に多臓器不全を合併した症例を急性多臓器不全症例と比較し, 救命率および重症度評価法 (APA-CHE II) について検討した. 対象は, 1996年4月より1997年9月までにsevere sepsisあるいはseptic shockの病態を呈し, 多臓器不全に陥ったためにCHDFを施行した30症例である. そのうち維持透析患者の急性多臓器不全合併例 (慢性例) は15例, 急性多臓器不全症例 (急性例) は15例であった. 長期生存例は, 慢性例は13%, 急性例は73%であり, 有意差を認めた. APACHE II scoreによる長期生存例の比較では, 20-29点, 30点以上において, 慢性例は急性例に比し, 生存率が有意に低かった. さらに死亡例のAPACHE II scoreの平均値は, 慢性例29.8±3.4, 急性例33.8±2.2と2群間に有意差を認めていることより, スコアリングで, 慢性例に対しては現行の5点にさらに5点を加え, 加算点を10点とすべきではないかと考える.
不全臓器数による長期生存例の比較では臓器不全数3において慢性例と急性例の生存率に有意差を認めていることより慢性例の慢性腎不全は, 急性例の腎不全と異なり, 単に不全臓器数1とは考えられず, 不全臓器数2と計算すべきと考える. 以上, 維持透析患者の多臓器不全合併症例は急性多臓器不全症例と比較すると非常に予後が悪いことが明らかとなった.

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