日本透析医学会雑誌
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血液透析患者におけるfree/total prostate specific antigen ratioの検討
影林 頼明吉田 克法米田 龍生藤本 清秀大園 誠一郎平尾 佳彦
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1999 年 32 巻 5 号 p. 357-361

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抄録

目的: 血清中の前立腺特異抗原 (PSA) のうち, 大半はα1アンチキモトリプシンなどと結合し, 一部は遊離型 (free PSA) として存在する. 限局性前立腺癌の診断において, PSA値が境界範囲にある症例で遊離型と結合型PSAの比 (F/T比) を測定することによって前立腺肥大症との鑑別に有用とされている. 今回我々は, 血液透析患者におけるF/T比およびPSAの透析性について検討を行った.
対象および方法: 臨床上非前立腺癌の維持血液透析患者36例 (平均年齢64.2歳, 平均透析歴59か月) を対象に, 血液透析前後にfree PSAおよびtotal PSAを測定 (EIA法, エスアールエル) した.
結果: 透析患者におけるF/T比は46.0±9.0%と腎機能正常対照群の29.4±9.7%に比較して有意に高値を示した (p<0.05). 血液透析により, total PSA, free PSAおよびF/T比の平均値はそれぞれ1.25ng/ml, 0.53ng/ml, 46.0%から1.35ng/ml, 0.53ng/ml, 42.6%に変化するもいずれも有意な変化ではなかった. さらにtotal PSA, free PSA, F/T比いずれも透析歴との間に相関は認められなかった.
結論: 腎不全患者におけるF/T比高値の原因として血液透析の影響は少ないことが示唆された.

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