日本透析医学会雑誌
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ダイアライザーの生体適合性の検討 -IL-6, IL-8および-酸化窒素の動態を中心に-
佐々木 信博草野 英二大友 貴史安藤 康宏浅野 泰
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1999 年 32 巻 5 号 p. 363-368

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抄録

生体適合性は血液が透析膜と接触することで起こる生体の反応の総称であり, 好中球脱顆粒化, 補体活性化, サイトカインの放出などがある. 最近, interleukin-6, 8 (IL-6, 8) などが顆粒球エラスターゼ (PMNE) の放出因子として注目されている. また, 内皮由来血管拡張物質である一酸化窒素 (NO) も透析低血圧に関連することが知られている. そこで今回我々は, これらの物質の透析中の動態を生体適合膜と非適合膜で比較し, 生体適合性の指標となりうるか否か検討した.
慢性維持透析患者5人を対象に, 非適合膜として再生セルロース膜 (RC) および適合膜としてポリスルフォン膜 (PS) をクロスオーバーで使用し, 透析前, 開始15分, 透析終了直前でWBC, Plt, PMNE, IL-6, IL-8, NOを測定した.
1) WBCの減少率は, 15分値でPS膜で21%に対し, RC膜で71%と後者で有意に大きかった. 2) PMNEは, 両膜とも15分では上昇せず透析後に上昇がみられたが, RC膜で有意に上昇が大きかった. 3) NOは, 両膜とも15分および透析後で減少したが, 両膜で差がなかった. 4) IL-6は, RC膜の透析後において有意な上昇がみられ, PMNEとIL-6の増加率には有意な正の相関が認められた. 5) IL-8は, 透析中有意な変動を示さず, 両膜で差を認めなかった.
今回の検討から生体適合性の指標として, WBC, Plt, PMNEに加えて, IL-6もその指標として有用であると思われた.

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