1999 年 32 巻 7 号 p. 1065-1070
ヒト腹膜中皮細胞 (HPMC) の増殖に対して各種浸透圧物質が与える影響を培養細胞を用いて検討した. 細胞増殖能は3H-thymidineの細胞内取り込みにて, 細胞損傷の指標としてはLDHの培養液上清中への放出にて評価した. 晶質浸透圧物質としてglucose, raffinose, sorbitol, sucrose, mannitol, glycerol, Amiyuを50mM, 100mMの濃度で, 膠質浸透圧物質としてはdextran 70, maltodextrin, hydroxyethylstarch 20を3.5%, 7%の濃度で検討した.
HPMCは浸透圧物質の濃度依存性に細胞増殖が抑制されたが, 膠質漫透圧物質に比べ晶質浸透圧物質においてより強い抑制が認められた. 高濃度 (100mM) での晶質浸透圧物質ではその多くに有意な細胞傷害が観察されたが, 膠質浸透圧物質 (7%) では有意差は認められなかった. また晶質浸透圧物質間でも細胞傷害の有無に差が認められた.
細胞増殖能は浸透圧物質の濃度依存性に抑制されるが, 各々の浸透圧物質の持つ細胞に与える毒性の影響も考えられた. 膠質浸透圧物質はHPMCに対し晶質浸透圧物質に比し細胞毒性の程度は低いと思われた.