日本透析医学会雑誌
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抗結核療法が奏効した進行性椎間板炎を発症した維持血液透析患者の1例
佐野 隆鎌田 貢壽長場 泰泉田 いぶき巽 洋桜井 健二小林 豊東原 正明
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1999 年 32 巻 7 号 p. 1095-1098

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抄録

症例は58歳, 女性. 昭和51年2月, 慢性腎炎による慢性腎不全にて血液透析導入となり維持透析を継続していた. 平成6年10月頃より腰痛を自覚. 炎症反応の上昇と歩行障害を認めるようになり同年11月19日当院へ入院. 入院時現症では下肢不全対麻痺の状態で, MRIにてL5-S1に椎間板炎の所見を認めた. 椎間板炎はStaphylococcus, Pneumacoccusなどの一般細菌を原因とする場合が多いが, 発熱が軽度であることと経過が緩徐であること, 赤沈優位の炎症反応がみられることから結核性椎間板炎を疑い, 抗結核療法を開始した. 4か月後, 炎症反応は正常化し, MRIにて炎症部位の縮小と腰仙椎の骨化を認め, 半年後には杖歩行が可能となった. 透析患者では結核の罹患率が高く, 肺外病変の合併も多い. さらに, 確定診断が困難で治療的診断になることも少なくない. 本例は臨床的所見から結核性椎間板炎を疑い, 抗結核療法にて治癒した1例である. 維持血液透析患者にみられる慢性進行性の椎間板炎は結核性椎間板炎を考慮する必要がある.

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