日本透析医学会雑誌
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大腿静脈留置ウロキナーゼ・コーティング・カテーテルの合併症
池上 修生木村 文宏池田 義弘床鍋 繁喜瀬口 健至鈴木 智史住友 誠辻 明小田島 邦男浅野 友彦早川 正道中島 史雄
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1999 年 32 巻 8 号 p. 1117-1120

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抄録

慢性腎不全の緊急血液透析導入時の一時的なブラッドアクセスとして使用されるウロキナーゼ・コーティング・カテーテル (UKカテーテル) のカテーテルトラブルについて, Shaldon型ダブル・ルーメン・カテーテル (DLカテーテル) と比較検討した. 対象は大腿静脈にUKカテーテルを挿入し血液透析を導入したUK群65名 (男性36名, 女性29名) とDLカテーテルを使用したDL群124名 (男性71名, 女性53名) である. UK群65名に対し87本のカテーテルを使用し, 合計653回の透析を行った. 1人あたりの透析回数は3-24回 (平均10.0回) で留置期間は5-52日間 (平均20.3日) であった. 合計653回の透析中22回 (3.3%) に合併症を認めた (患者65名中12名). 一方DL群124名は170本のカテーテルを使用し, 合計1474回の透析を行った. 1人あたりの透析回数は2-35回 (平均11.9回) で留置期間は3-92日間 (平均26.4日) であった. 合計1474回の透析中56回 (3.9%) に合併症を認めた (患者124名中56名). 内訳はUK群は血流不全が16回 (透析1回あたり2.4%), 発熱は3回 (0.45%), 自然抜去は1回 (0.15%) であった. また, 透析中にカテーテル自体の破損を2回 (0.30%) 認めた. DL群は発熱が27回 (1.83%) と最も多く, 次いで血流不全が21回 (1.42%), 出血および血腫が4回 (0.27%), その他, 自然抜去が4回 (0.27%) であった. 両群間でカテーテル合併症の発生頻度に有意差を認めなかった. 個々の合併症では発熱の発生頻度だけがDL群のほうがUK群より有意に高かった (P<0.01). また血流不全はUKカテーテルで多い傾向にあったが, 有意差はなかった. これらの結果からUKカテーテルのウロキナーゼで被覆された利点は必ずしも証明されなかったが, 新たに重篤な合併症も認められず, 留置後でも歩行可能であるという患者行動制限の少なさを考え合わせると, その使用は望ましいと考えられた.

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