日本透析医学会雑誌
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巨大化した多発性嚢胞腎に対する縮小術-
腎動脈塞栓術 (renal-TAE) の試み
乳原 善文田上 哲夫香取 秀幸横田 雅史竹本 文美今井 利一井上 純雄葛原 敬八郎原 茂子山田 明
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2000 年 33 巻 11 号 p. 1381-1388

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抄録

多発性嚢胞腎における腎は経年的に腫大を続けることが多く, そのmass effectにより様々な合併症を引き起こすが, これまで有効な治療法はなかった. 我々は選択的腎動脈カテーテル操作により主にcoilを塞栓物質として用いた血管内治療を行い腎の縮小化を目指した. 対象は透析導入後の乏尿症例で腹部膨満の著明な症例, および肉眼的血尿症例で, 1996年10月から現在まで計31名に対して施行した. stainless steel coilを使用した10例の10か月後の腎サイズは前値との対比で平均65±9%であり, microcoilを使用した7例の3か月後では65±13%であった. 全例において効果はみられ, まだ重大な合併症は生じていない. 多発性嚢胞腎の透析患者に対して腎動脈を塞栓することにより行う‘内’的な本治療法は, 外科的手術のような‘外’的治療法と対比すると, 安全かつ有効な血管内治療である. 本疾患における腎動脈が腎機能を保持する働きから嚢胞群を養う働きへと機能転換をきたすことから, 栄養血管化した腎動脈分枝を兵糧攻めすることが本疾患の治療になると考えられる. 塞栓物質の工夫によりさらに効果は上がるものと期待される.

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