日本透析医学会雑誌
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下大静脈径, 左室拡張期径を用いた適正なdry weight設定の試み
金田 幸司縄田 智子吉田 博山中 邦稔清瀬 はるな宇野 克彦阿部 勢津子猿渡 研一
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2000 年 33 巻 5 号 p. 353-359

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抄録

透析患者について左心系を反映する左室拡張期径 (LVDd) と右心系や循環血漿量を反映する下大静脈径 (IVCd) を用いてdry weight (DW) を調節することの有用性について左室収縮能, 拡張能, 透析低血圧を含めて検討した. 対象は安定した維持透析患者71症例で, 対照として健常者40例を用いた.
【結果】1) 透析症例ではIVCdは左室拡張能 (E/A) と相関し (r=0.29, p<0.01), LVDdは左室収縮能 (EF) と相関した (r=-0.69, p<0.01). 2) 透析症例の平均±1 SD値 (LVDd: 43.2mm-54.5mm, IVCd: 8.7mm-14.9mm) を基準に個々の症例を観察すると透析低血圧はIVCd, LVDdいずれかの低下例が, それ以外の症例に比べて多く認められた (8/15, 8/33: p<0.05). 3) 左室拡大例において, DW減少に伴い半数は両者の改善が認められ, 同時にEFも改善したが, 一方のみの改善しか認められず他方の急激な低下をきたす症例もあり, これらの症例ではEFも改善しなかった.
【結論】IVCdまたはLVDdの一方のみの評価でDWの調節を行った場合, 除水過多が起こる可能性があったが, 両者を同時に評価することで急激な透析低血圧を予防できる適正DW設定が可能と考えられた.

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