日本透析医学会雑誌
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正中動脈遺残を伴った手根管症候群 (CTS) を示した血液透析患者の1例
柳場 悟安藤 康宏宮地 直恒池松 いずみ草野 英二浅野 泰
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2000 年 33 巻 5 号 p. 369-373

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抄録

長期血液透析患者に通常のアミロイド沈着のみならず正中動脈遺残が正中神経圧迫に関与していると思われた手根管症候群 (CTS) を経験したので報告する. 症例は38歳男性で, 慢性糸球体腎炎による慢性腎不全のため約14年の血液透析歴を有していた. 透析時あるいは労作時に増強する左手指のしびれ・疼痛を認め, Tinel's signおよびPhalen's sign陽性, 正中神経領域での著明な末梢神経伝導速度 (NCV) の低下を認めることより左側手根管症候群 (CTS) と診断した. 手根管部の超音波検査およびMRアンギオグラフィー検査で一部網目状に分岐して正中神経と並走する正中動脈の遺存を認めた. 神経剥離術の術中所見では手根管の狭窄とともに, 正中神経と並走し複雑に分岐する正中動脈の遺存を認め, この血管による正中神経への一部圧排も疑われた. このため血管損傷に注意して慎重に正中神経を剥離し, 術後は症状の著明な軽減を認めた.
正中動脈は通常, 胎児期にのみ存在し, 成人での遺存は比較的稀である. 透析患者のCTSの原因あるいは合併症として本症はさらに稀と思われるが, CTSに対する内視鏡下手根管開放術などではこのような血管奇形を伴う血管損傷による出血の可能性があるため, 術前に超音波あるいはMRアンギオグラフィー等による充分な検索が必要と思われる.

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