日本透析医学会雑誌
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腎瘻カテーテル留置透析患者に発生した腎盂扁平上皮癌の1例
山田 徹西田 泰幸高橋 義人石原 哲出口 隆宇野 雅博小林 覚
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2000 年 33 巻 6 号 p. 1045-1048

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抄録

慢性閉塞性腎疾患や逆流性腎疾患に基づく透析症例中には尿路力テーテル管理を必要とする症例もあり, しばしば認める血尿への対処に苦慮することがある. 血尿の中には尿路悪性腫瘍に起因するものもあり重大な注意を要する. 今回我々は, 長期腎瘻力テーテル留置中の透析患者に発生した腎盂扁平上皮癌の症例を経験したので報告する.
症例は, 50歳女性, 右無形成腎および左尿管狭窄による閉塞性腎症のため23歳時より左腎瘻留置され, 37歳時より血液透析を導入された後も2週毎に腎瘻カテーテルの交換を受けていた. 1998年3月, 持続性の血尿を主訴に受診し, 画像診断にて腎盂内の血腫とともに充実性腎盂腫瘍が疑われた. 尿細胞診は陰性であったが, 扁平上皮癌の腫瘍マーカーである血中squamous cell carcinoma抗原が高値を示したため扁平上皮癌による左腎盂腫瘍と診断した. 臨床病期はT4 N2 M1であったが, 血尿のコントロールのため左腎摘除術を施行した. 病理診断はsquamous cell carcinoma+transitional cell carcinoma, pT3であった. 血中squamous cell carcinoma抗原は術前152ng/mlから2.2ng/mlに低下し, 術後経過は良好で術後22日目に退院した, しかし, 肺転移巣の急速な進展のため術後37日に死亡した. 長期カテーテル留置例には時に扁平上皮癌が発生することが知られているが, 確定診断時には進行癌となり, 予後不良であることが多い. したがって長期尿路力テーテル留置例の肉眼的血尿に対しては, 尿路上皮癌の発生を常に念頭におき尿路の検索を行うことが肝要である.

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