日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
透析患者における血小板由来マイクロパーティクルの解析
岩田 晶子安藤 稔土谷 健二瓶 宏
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 34 巻 10 号 p. 1307-1312

詳細
抄録

慢性腎不全患者には, 出血傾向を呈する一方で, 血栓症に罹患する頻度も高率であるという, 一見矛盾する2つの病態が同居している. しかしその原因については十分に検討されていない. これまでに, 慢性腎不全患者の血小板では, その表面の糖タンパク (GPIIb・IIIa) 発現の低下があること, それとvon Willebrand因子とのinteractionの障害から血小板の血管内皮への粘着低下が生じることなどが指摘され, その出血傾向の機序はある程度解明されつつある. しかし, 慢性腎不全の血栓形成性に対する血小板の関与については, 報告が少ない.
我々は, 病的血栓症の発症機序に血小板由来マイクロパーティクル (PMP) が少なからず関係していることを知り, 慢性腎不全患者が血栓を形成し易いことには, このPMPの異常が関与しているのではないかとの仮説を立てた. そこで血液透析 (HD) 患者22例, 腹膜透析 (CAPD) 患者15例の血中PMP数とその質の変化をフローサイトメトリーを用いて, 定量的に測定した. また, HD療法と内シャントのPMP産生への影響についても検討を加えた. その結果, 透析患者の血中PMP数は, 透析方法のいかんにかかわらず, 健常コントロールより増加しており, 特に, Annexin V (凝固因子活性化能の指標), P-selectin (接着能の指標) を発現したPMPが有意に血中に増加していることが判明した. また, こうしたPMP数はHDとCAPD間では差がなかった. 4時間のHD治療の間にPMP数の有意な増加はみられず, シャント血 (内シャント近傍中枢側の脱血用静脈から採取した血液) と, 非シャント血 (非シャント肢の肘静脈から採取した血液) のPMP数の間にも有意差はなかった.
以上より, 透析患者血中ではPMP数が増加しており, このため血小板の正常止血機能が低下しているとされる透析患者においても, 血栓性疾患の罹患率は高いのであろう. また, PMP数の増加には内シャントやHD治療過程の血小板刺激は関与していないと推察された.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top