症例は, 1995年1月より維持血液透析中の64歳, 男性 (原疾患: 腎硬化症). 1998年2月より嗄声が出現し, 胸部X線写真で左第1弓の突出を認め, 当科に入院した. 弓部大動脈瘤の診断で4月21日に弓部大動脈瘤置換術を施行された. 術後7日目に術創部より排膿を認め, 縦隔洞炎と診断された. 抗生剤投与とドレナージにて軽快し, 外来維持透析へ移行した. 同年11月頃より腰痛が出現し, 12月中旬より発熱, 胸部違和感, 腰痛の増強 (歩行困難) のため, 当科に緊急入院した. WBC 13,100/mm3, CRP 20.3mg/dl, 血液培養にて黄色ブドウ球菌を検出し, 腰部MRIにてL 2/3の椎間板炎, 脊椎炎の所見を認めた. また, 同時に弓部大動脈瘤置換部周囲に造影効果の乏しい腫瘤像を認め, 大動脈置換グラフト感染に伴う縦隔炎と診断した. 外科的な処置はリスクが高いため, 薬剤感受性を参考に抗生剤を継続投与し, 自他覚所見および画像所見の改善を得た. 本例の感染源の特定はできなかったが (術後の持続感染, シャント穿刺時の感染等), 透析患者の易感染性を考える上で興味ある症例と考え, 報告する.