日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
Sparfloxacinが原因と考えられた横紋筋融解症, 急性腎不全の1例
長浜 寛二加美川 誠眞田 俊吾中 聡夫
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 34 巻 12 号 p. 1505-1509

詳細
抄録

78歳男性の尿路感染症に対しニューキノロン抗菌薬sparfloxacinと排尿障害に対しtamsulocinを投与した. 投与開始10日後, 疼痛, 筋力の低下あり, 12日後には全身の麻痺を生じ, 救急車にて来院した. 全身の浮腫, 発熱, 褐色尿を認め, 血中のCPK, ミオグロビン, アルドラーゼの著明な上昇を認めた. 乏尿, 血中クレアチニン, BUNの上昇あり, 急性腎不全を併発した. 症状, 検査値よりsparfloxacinによる横紋筋融解症と診断し, 絶対安静とし, 入院2日目に血液透析, 3日目に血液濾過透析を施行した. その後は輸液, 利尿負荷にて全身状態, 腎機能は徐々に改善し, 入院25日目にはリハビリを開始した. 入院40日目には筋力も回復し退院となった. 現在外来にて経過観察中であるが, 軽度腎機能障害を認めるのみである.
横紋筋融解症は骨格筋の融解によって筋肉細胞成分が血液中に流出する疾患であり, 筋細胞中のミオグロビンも大量に流出するため, 腎臓においてはミオグロビンによる尿細管の負荷が生じ, 急性腎不全を併発することがある. 筋細胞障害過程の詳細は不明であるが, free radicalや筋細胞内のカルシウムイオンの上昇が関与していると考えられている. ニューキノロン抗菌薬による横紋筋融解症の報告は稀で, 本邦では15例の報告がある. この15例に自験例を含めて検討した. sparfloxacinによるものは自験例が2例目であった.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事
feedback
Top