日本透析医学会雑誌
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血液透析患者に発生した腎自然破裂の2例
林 秀樹伊野部 拓治藤崎 雅史狩野 武洋安芸 雅史桑原 守正藤崎 伸太
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2001 年 34 巻 2 号 p. 143-146

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抄録

血液透析患者に発生した腎自然破裂の2症例を経験し, その治療法などについて検討を行った.
症例1は透析歴13年6か月の49歳男性で, 透析終了後約5時間の後に突然, 左下腹部痛をきたし来院. 画像所見より多嚢胞化萎縮腎の自然破裂と診断され入院となった. vital signが安定していたので保存療法を行っていたが, 意識レベルの低下, 血圧低下とともに急速な貧血の進行を認めたため, 緊急に腎摘除術を施行した. 摘出標本から嚢胞壁の一部に径約1cmの腎細胞癌が認められた. なお出血部位は特定できなかった. 術後6年6か月の現在, 再発ならびに転移を認めていない.
症例2は透析歴2年3か月の57歳男性で肉眼的血尿ならびに徐々に出現する右腰部痛のため来院. 画像所見より右腎自然破裂と診断され入院となった. vital signが安定していたため安静, 輸血および止血剤投与にて治療を行った. 第28病日の腹部CTでは血腫は吸収過程にあると考え退院となった.
透析患者の腎自然破裂の治療を行うにあたって保存的治療, 観血的治療のどちらを行うべきかということが臨床上しばしば問題となる. 今回我々は自験例2例と本邦の報告例を参照し, その対処方法などについて論じる.

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