日本透析医学会雑誌
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わが国の慢性透析療法の現況 (2000年12月31日現在)
中井 滋新里 高弘佐中 孜菊池 健次郎北岡 建樹篠田 俊雄山崎 親雄坂井 瑠実大森 浩之守田 治井関 邦敏久保 和雄田部井 薫政金 生人伏見 清秀和田 篤志三和 奈緒子秋葉 隆
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キーワード: 透析, 統計, 死亡率
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2002 年 35 巻 1 号 p. 1-28

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抄録

2000年末の統計調査は全国の3,360施設を対象に実施され, 3,358施設 (99.94%) から回答を回収した. 2000年末のわが国の透析人口は206,134人であり, 昨年末に比べて8,921人 (4.5%) の増加であった. 人口百万人あたりの患者数は1,624.1人である. 1999年末から2000年末までの1年間の粗死亡率は9.4%であった. 透析導入症例の平均年齢は63.8 (±13.9; ±s.d.) 歳, 透析人口全体の平均年齢は61.2 (±13.3) 歳と昨年よりもさらに高齢化した. 透析導入症例における原疾患では, 糖尿病性腎症が36.6%と昨年よりさらに増加し, 慢性糸球体腎炎は32.5%とさらに減少した.
2000年末の調査では, 降圧薬内服の有無, 透析前後の収縮期/拡張期血圧, 血清HDL-コレステロール濃度, ビタミンD製剤の投与内容および投与量, 炭酸カルシウム内服量, 末梢循環障害に対する各種インターベンション (バイパス手術, 人工血管置換術, ステンティング) の既往, coronary artery bypass grafting (CABG) の既往, percutaneous transluminal coronary angioplasty (PTCA) の既往, 虚血性心疾患に対するステンティングの有無, 喫煙の有無, 初回透析時ブラッドアクセス種類, そしてその作成年月が新たに調査された.
透析患者全体の降圧薬内服率は60.9%であった. 血液透析患者の血清HDL-コレステロール濃度の平均は47.65±18.47mg/dLであり, 血清アルブミン濃度と正の相関を示したが, body mass indexとは逆相関を示した.
血液透析患者の中で, 四肢切断の既往を持つ患者は1.6%であり, 末梢循環障害に対するバイパス手術の既往を持つ患者は0.7%であった. また, 血液透析患者の中で心筋梗塞の既往を持つ患者は4.5%, CABGの既往を持つのは1.6%, PTCAの既往を持つのは2.8%であった.
透析患者の2.0%がビタミンD製剤の経口パルス療法を, 6.0%がビタミンD製剤の経静脈的なパルス療法を施行されていた.
血液透析の生命予後危険因子に関する解析では, 四肢切断, 心筋梗塞, 脳梗塞, あるいは脳出血の既往を持つ患者に高いリスクを認めた. さらに, 20IU/L以上のGPT, HCV抗体陽性, 肝細胞癌・肝硬変の合併, 10万/μL未満または20万/μL以上の血小板数, 0.2mg/dL以上のC-reactive protein (CRP), 3,000/μL未満または8,000/μL以上の白血球数, 22kg/m2未満のbody mass index, 160mg/dL未満または260mg/dL以上の血清総コレステロール濃度などに高い死亡のリスクを認めた.

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