日本透析医学会雑誌
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透析患者にみられる腎癌の現況
2000年度 (1998年3月から2年間の) アンケート集計報告
石川 勲
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2002 年 35 巻 6 号 p. 1111-1118

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抄録

著者らは先の第9回アンケート調査に引き続き, 2000年2月に過去2年間に診断された透析患者の腎細胞癌 (腎癌) について再びアンケート調査を実施し, その結果を解析した. アンケートは全国の透析センターを中心に2,924通送付され, 2,042通 (69.8%) の回答が得られた. 今回のアンケート調査では新たに透析患者の腎癌が399例集計され, うち男性は320例, 女性は79例と男性で4.1倍多かった. 腎癌症例の平均年齢は56.1±10.7歳 (平均±標準偏差), 平均透析期間は132.8±85.8か月であった. また診断の手がかりはこれまでと同様, スクリーニングによるものがほとんどで (88.0%), 症状出現によるものは23例 (5.8%) にすぎなかった. 多嚢胞化萎縮腎の合併は報告のあった380例中304例 (80.0%) にみられた. 予後をみると転移は379例中57例 (15.0%), 生存腫瘍なしは281例 (70.4%), 生存腫瘍ありは51例 (12.8%), 腎癌死は42例 (10.5%), 他疾患死は19例 (4.8%) であった. 1999年腎癌取扱い規約に基づく組織型でみると, 報告のあった287例中淡明細胞癌141例 (49.1%), 顆粒細胞癌62例 (21.6%), 嫌色素細胞癌2例 (0.7%), 紡錘細胞癌4例 (1.4%), 嚢胞随伴性腎細胞癌24例 (8.4%), 乳頭状腎細胞癌54例 (18.8%) であった.
以上より, 今回はこれまでのアンケート調査の中で腎癌例が最も多く集計された. 特に注目される点は, 透析患者の腎癌は205例52.3%が透析10年以上, 54例13.8%が透析20年以上の長期透析例でさらに増加したことである.

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