日本透析医学会雑誌
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腎細胞癌との鑑別が困難であった右腎嚢胞内血腫を発症した維持血液透析患者の1例
藤田 哲夫吉田 一成斎藤 毅吉田 煦馬場 志郎
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2003 年 36 巻 10 号 p. 1573-1577

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抄録

腎嚢胞内血腫が腎細胞癌との鑑別が困難であった維持透析患者を経験したので報告する. 症例は64歳の男性. 45年前に右腎出血により右腎部分切除術の既往があった. 慢性糸球体腎炎による終末期腎不全のため2000年3月に血液透析導入. その後, 腹部超音波検査で右腎腫瘤を指摘された. 腹部CT・MRI検査では右腎下極の径4cm大の腫瘍は血腫と腎細胞癌との鑑別が非常に困難であった. そのため手術摘除が選択されたが, 術後病理組織学的診断は腎嚢胞内血腫であった. 血液透析患者に発生した腎嚢胞内血腫の報告例は多嚢胞化萎縮腎 (ACDK) に合併するものが多く, 本症例のような画像所見はまれである. 透析中の抗凝固剤使用による易出血性が考えられるが, 詳細は不明である. 血腫は画像診断上, MRI検査が有用だが確定診断は今回の症例では困難であった. 低侵襲的治療をすべきであると考えられたが, 腎細胞癌の合併率が高いことを念頭におき手術切除とした.

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