2003 年 36 巻 11 号 p. 1625-1630
塩酸イリノテカン (CPT-11) は, I型DNAトポイソメラーゼ阻害によりDNA合成を阻害し, 広い抗腫瘍スペクトラムを持つ. 血液透析療法中の患者ではCPT-11を減量し使用した報告は一例あるものの, その薬物動態, 透析性についての報告はない. われわれは, 維持血液透析中の大腸癌肝転移例にCPT-11を単回投与し, その薬物動態, 透析性について検討した.
症例は58歳, 男性. インフォームドコンセントを得た後, CPT-11 50mg/m2を透析2時間前より90分かけて点滴静注し, 透析開始直後および0.5, 1, 2, 4, 8, 12, 24時間後にCPT-11およびその代謝物質 (SN-38およびSN-38G) の血漿中濃度を測定した. また, 透析開始0.5時間後のダイアライザー前後および透析液中の濃度も測定した.
その結果, CPT-11およびSN-38Gは血液透析により除去された. 活性代謝物質であるSN-38は血液透析により直接的には除去されなかったが, CPT-11やSN-38Gが減少するため透析施行中に濃度低下を認めた.
CPT-11は胆汁排泄が約80%, 腎排泄が約20%であり, 腎不全患者では投与量を調節する必要がある. 血液透析患者にCPT-11 60mg/m2 (週1回) は, 副作用をきたさず投与可能であった.