日本透析医学会雑誌
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第V因子インヒビターのために著明な出血傾向を示した血液透析患者の1例
石津 昌直黒岩 三佳田中 謙二長谷川 善之
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2003 年 36 巻 7 号 p. 1285-1288

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抄録

著明な出血傾向を示し, 血液凝固第V因子インヒビターの存在を確認しえた一例を経験したので報告する. 症例は55歳, 男性. 慢性糸球体腎炎による末期腎不全のため1994年から維持血液透析を受けていたが, 2002年6月から出血傾向が出現した. PT, APTTが著明に延長しており, 第V因子活性が1.4%と著明に低下していたため当院に紹介入院となった. PIVKA-IIは正常であり, 正常血漿添加補正試験で補正されなかったため, 先天的な第V因子インヒビターにビタミンK欠乏を合併した可能性は否定され, 第V因子インヒビターの存在が疑われた. 著明な貧血と筋肉内への出血がみられ, 第V因子インヒビターが17ベセスダ単位/mLと高値であったため凍結血漿の輸注や血小板輸血, ステロイドホルモンの投与と血漿交換を行ったが, 第6病日, 突然死した. 透析患者における第V因子インヒビター発現の報告はなく, まれな症例であると考えられた.

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