日本透析医学会雑誌
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中性化腹膜透析液のグルコース分解物濃度について
山本 忠司出雲谷 剛奥野 仙二山川 智之
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2004 年 37 巻 12 号 p. 2069-2077

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抄録

中性透析液 (N-PD) のグルコース分解物 (GDPs) 濃度およびpHを同一条件で測定し比較検討した.
対象としたN-PDは平成14年8月までに薬価収載された4社の製品である. これら製品の内, N-PD, 1.5%および2.5%液に対し製造後4か月にGDPs濃度を測定した. 比較として製造後4から12か月のN-PD, 4.0%および製造後12か月の酸性透析液 (A-PD) についても測定した. また, 長期保存の影響をみるために製造後1年のGDPs濃度も測定した. 測定項目はグルコース室側pH, 混合後pHおよびGDPs濃度で, GDPsについては, 3-デオキシグルコソン (3-DG), グリオキサール, メチルグリオキサール, ホルムアルデヒド, アセトアルデヒド (AcA), 5-ヒドロキシメチルフルフラール (5-HMF), フルフラール, ギ酸, およびレブリン酸とし, HPLC法により3バッグを測定した.
N-PDのグルコース室側pHは2.90-6.04であった. 混合後pHでは6.67-7.47であった. A-PDは5.17-5.25であった. N-PD各社の製品はギ酸とレブリン酸を除くGDPsのすべてに有意差を認めた. GDPsの総量 (μmol/L) は, 1.5%で30.4-95.1, 2.5%で51.4-136.5, 4.0%で78.4-192.2と製品間に差を認めた. また, その内訳は3-DGと5-HMFが平均95%を占めていた. N-PDの低GDPs化には, 3-DGと5-HMFの低減が必要であるが, 3-DGと5-HMFはグルコース室側pH 4.5付近を境に鏡像的変化をするため, pHによる調整は困難と思われた. A-PDのGDPs総量では1.5%で324.9, 2.5%で481.8, 4.0%で594.2とN-PDに比べ約3倍から10倍高値であった.
長期保存 (1年間) によるN-PDのGDPs濃度 (μmol/L) の変化では, 1.5%液でAcAのみが平均で1.2から2.8に増加し, 2.5%液でもAcAのみが1.4から2.7と増加した. 他のGDPsには変化なく, N-PDはA-PDに比べ長期保存でも安定していた.
各社N-PDはpHを中性化しGDPsを低減させるということでは, その目的が達成されているといえる. しかし, 製剤設計の違いからGDPs濃度に差があることが判明した. その影響を考察するためには, それぞれのGDPsの細胞障害性, 生体適合性についてさらに検討する必要がある.

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