日本透析医学会雑誌
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CAPD患者に発症した特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) の1例
二宮 郁榊 学松下 和弘横田 欣也多田羅 潔大山 知代
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2004 年 37 巻 12 号 p. 2089-2092

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抄録

症例は60歳, 男性. 1998年1月, 嚢胞腎を原疾患とする慢性腎不全にて腹膜透析に導入した. 導入後の経過は良好であった, 3年4か月経過した2001年5月11日, 上気道炎症状出現後, 全身倦怠感が増強し, 肉眼的血尿も出現したため, 5月14日, 精査加療のため当科入院した. 入院時現症では四肢に点状出血を認め, また肉眼的血尿もあり, 全身倦怠感も高度で体動不能であった. 腹部CTでは, 右腎に出血巣と思われる高吸収領域が認められた. 血液検査では血小板数が1.5×104/μLと著明に低下, 翌日には0.5×104/μLまで低下したため, 血小板輸血を行った. 血小板減少の原因検索の目的で5月16日に骨髄穿刺を施行した. 骨髄所見は赤芽球系・顆粒球系は正常であり, 巨核球系の増多と血小板付着像の減少が認められたこと, PAIgGが73.9ng/107 cells (9.0-25.0) と高値であること, ほかに血小板減少をきたしうる疾患の合併はないことより, ITPと診断し, 5月17日よりステロイドパルス療法を開始した. 治療開始後4日目には血小板数は7.6×104/μLまで増加した. 以後経口ステロイドにて経過観察したが, 6月2日には再び1.0×104/μLまで減少したため, 2回目のステロイドパルス療法を施行した. ステロイドパルス療法にもかかわらず, 血小板数は0.8×104/μLまで減少したため, 6月22日より経口prednisolone 40mg/dayに経口cyclosporine (CyA) 100mg/dayを追加した. 血小板は徐々に増加し, 10×104/μLを維持し, 肉眼的血尿, 点状出血も消失した.

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