日本透析医学会雑誌
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Anaphylactoid purpuraによる小腸出血に対してvasopressinの持続動注が著効した透析患者の1症例
徳山 正徳藤森 明依藤 正彦谷 聡寺西 哲也松本 祥一平田 勇三高島 務岩崎 徹
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2004 年 37 巻 3 号 p. 243-247

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抄録

症例は68歳, 透析治療中の慢性腎不全の男性. 大腸内視鏡検査で直腸癌と診断されたが, 検査後S状結腸穿孔による汎発性腹膜炎を合併した. このため緊急にS状結腸切除術を受け, 二期的に直腸癌の切除手術を受けた. 術後腹腔内膿瘍が生じたが抗生剤治療にて軽快した. 一時状態は落ち着いたが, その後両下肢に紫斑が出現, 関節の腫脹・疼痛および腹痛も伴った. 皮膚生検所見よりanaphylactoid purpura (AP) と診断された. 赤茶色の下血が出現し, ステロイド治療でも下血は止まらず頻回の輸血を必要とした. 胃および大腸内視鏡検査では出血源が確認されず, 小腸からの持続的出血と考えられた. 上腸間膜動脈造影にて明らかな出血の所見は得られなかったが, vasopressinを持続動注することにより完全な止血が得られた. 高齢者のAPは重篤な消化管合併症を伴うことがあるが, vasopressin動注治療は難治性の消化管出血に対して有効な治療法である.

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