日本透析医学会雑誌
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感染性心内膜炎に心室瘤破裂を合併した維持透析患者の1例
岩坪 修司藤元 昭一藤本 千夏辰元 真理子山田 和弘佐藤 祐二原 誠一郎江藤 胤尚中村 都英鬼塚 敏男
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2004 年 37 巻 4 号 p. 323-328

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抄録

症例は44歳, 女性. 1985年2月, 慢性糸球体腎炎による慢性腎不全のため血液透析導入. 2002年10月初旬より発熱, 全身関節痛, 右腰~殿部痛が出現したため, 近医へ入院した. 高度の炎症所見があり, 血液培養検査でMSSA (methicillin sensitive Staphyiococcus aureus) を検出し, 心エコー検査で僧帽弁後尖に弁石灰化とともに疵贅を認め, 感染性心内膜炎と診断された. 当科へ転入院後のCT検査で, 全身性に多発性膿瘍を認めた. 左心不全は増悪し, 弁尖の疣贅が1.5-2.0cmと大きかったこと, 広範な塞栓症状があったため, 10月23日, 緊急に僧帽弁置換術を施行した. 炎症反応は改善したが, 術後9日目に右心室自由壁穿孔による心タンポナーデを発症し, 穿孔部縫縮術を施行した. 以後, 全身状態は改善していたが, 僧帽弁置換術後51日目に, 再び心タンポナーデを発症. 胸部CTで僧帽弁直下の左心室瘤破裂を認め, 同日死亡した. 長期透析患者で弁石灰化による弁膜症合併時には, 感染性心内膜炎の発症に注意を要する. 本症例のように, 透析患者に感染性心室瘤を合併することはまれであり, 若干の考察を加え報告する.

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