2004 年 37 巻 8 号 p. 1665-1669
59歳男性. 糖尿病腎症による腎不全のため2001年2月に血液透析に導入された. 2002年5月より下痢が続き摂食不良となった. 2002年6月5日透析終了後, 高度の脱力感を訴えた. 血清カリウム1.3mEq/Lが判明し, 直ちに当院に入院した. 下痢によるカリウム不足量をカリウムの点滴静注・経口摂取により補い低カリウム血症を是正した. 入院後も頑強な水様性下痢が持続するため消化管精査を行ったところ腹部CT・注腸造影検査で上行結腸に腫瘤を認め, 下部消化管内視鏡検査でBauhin弁より結腸側の粘膜下腫瘍と診断された. 結腸右半切除術を施行し, 慢性下痢は消失した. 組織像は脂肪腫であった. 無尿の患者では経口摂取が保たれている限り低カリウム血症は起こりにくいが, 本症例では腫瘍により頑強に続く下痢と偏った摂食により低カリウム血症となったものと考えられた.