日本透析医学会雑誌
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全身性エリテマトーデス患者の血液透析導入時の特徴 -慢性糸球体腎炎患者との比較-
菅沼 信也湯村 和子内田 啓子鈴木 啓子内藤 順代小池 美菜子川嶋 朗新田 孝作秋葉 隆二瓶 宏
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2004 年 37 巻 9 号 p. 1789-1796

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抄録

近年, 全身性エリテマトーデス (SLE) に対する治療法の進歩によりループス腎炎を発症しても長期生存が可能となっているが, 末期腎不全に至る患者数の明らかな減少はみられていない. SLE患者と他の腎疾患の透析導入時の相違についての報告はなく, SLE患者の血液透析導入時および導入前後の状態を明らかにし, 年齢・性をマッチングした慢性糸球体腎炎 (CGN) からの導入患者との相違も検討し, 以下の成績を得た.
1) 透析導入時血清総蛋白 (TP), アルブミン (Alb) はSLE群の方が, CGN群に比較して低値の傾向を認め, ドライウエイトに到達するまでに要した日数および透析回数が, SLE群の方がCGN群よりも高値で, 潜在的に体液過剰状態の存在が考えられた. 2) SLE群の方が, CGN群より透析導入時に, 血清クレアチニン値は低値であったが, このことは筋肉量が少ないことによるかもしれない. 24時間クレアチニンクリアランス (24hr Ccr) には差がなかった. そのためSLE群のCr値は腎機能を過小評価している可能性がある. 3) 緊急導入の割合に差はなかったが, 臨床経過よりみてSLE群において, CGN群よりもやや急峻な症例を認めた. 4) SLE群の方が, CGN群より平均在院日数が有意に長く, 感染, 出血などの合併症の影響が考えられた. 5) 維持透析に至るSLE患者の活動性は必ずしも低下しておらず, 導入後もステロイド薬などによる継続加療が必要と考えられた.

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