日本透析医学会雑誌
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透析患者における腎癌の現況
2004年度アンケート調査報告と1982年度からのまとめ
石川 勲
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2005 年 38 巻 11 号 p. 1689-1700

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抄録

2002年3月以降の2年間に診断された透析患者の腎癌についてアンケート調査を行った. 今回は従来の調査項目に加え, 新たに転移の発見時期および腎機能代行治療別の腎癌発生数についても調べた. また, 今回を含め1982年より2年ごとに行われた計12回のアンケート結果もまとめて報告する. 今回は新たに534例 (男性420例, 女性112例, 不明2例) の腎癌が集計された. 判明している525例中血液透析は478例 (91.0%), CAPDが28例 (5.3%), 腎移植 (末期腎不全の治療期間の半分以上が腎移植) が5例 (1.0%), CAPDと血液透析が10例 (1.9%), 腎移植と血液透析が4例 (0.8%) であった. 年間発生頻度は10万人対191人で, 平均年齢は58.9±10.9歳, 平均透析期間は145.7±95.0か月, 症状が出現したもの5.8%, 多嚢胞化萎縮腎合併81.5%, 癌の平均直径は3.53±2.01cmであった. 転移は524例中73例 (13.9%) に認められ, 報告のあった64例の発見時期は腎癌発見時にみられたもの47例 (73.4%), 経過観察中にみられたもの17例 (26.6%) であった. また過去12回の集計結果によると腎癌例は総計2,873例で, 男性2,293例, 女性574例, 不明6例で, 男女比は4:1, 平均年齢は55.5±11.5歳, 平均透析期間は126.9±84.9か月, 多嚢胞化萎縮腎の合併率は81.3%, 癌の平均直径は3.97±2.67cm, 転移は15.4%にみられた. また年度ごとに症例数は増加したが, 発見時の癌の直径は小さくなり, 転移率も低下する傾向がみられた. 結論として, 過去12回のアンケート調査の中で今回最も多くの腎癌例が新たに集計された. 腎癌例の平均透析期間はますます長くなり, 腎癌は長期透析合併症の一つであることが再確認された. 最近の傾向として, スクリーニングが普及したため腫瘍は小さいうちに見出され, これが転移率の低下傾向につながっている可能性がある.

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