日本透析医学会雑誌
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幼児における塩酸セベラマー使用経験
中島 泰志本田 雅敬幡谷 浩史濱崎 祐子後藤 美和大迫 豊仲田 晴子石倉 健司池田 昌宏
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2005 年 38 巻 3 号 p. 219-225

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抄録

塩酸セベラマーは非吸収性のリン (P) 吸着ポリマーである. 血清カルシウム (Ca) 濃度を上昇させることなく血清P値の低下が期待できるため成人領域では広く使用されているが, 小児における報告は少なく, 2歳以下の乳幼児における報告はない. 1歳8か月の女児に対して塩酸セベラマーを投与したので, 報告する.
症例は右腎無形成および左低形成腎のため腎不全となり, 生後9か月時, 腹膜透析 (PD) に導入した. 保存期より高P血症, 高Ca血症を認め腎性くる病を合併していたが, 活性型ビタミンD3製剤およびカルシウム製剤の投与は困難であった. PD開始後も血清Ca値, 血清P値のコントロールは得られず, Ca×P積高値が持続した. 短期的なアルミニウムゲル製剤を使用した後, 塩酸セベラマーを投与した. 塩酸セベラマー開始後は, 血清Ca値を上昇することなく血清P値の低下が得られ, Ca×P積の低下が得られた. 投与前後で血清総コレステロール値および血清重炭酸イオン値の低下を認めた. 投与に際して錠剤を粉砕投与したが, 効果は確認された. ミルクへの撹拌注入は沈殿を生じた. 6Fr. 栄養カテーテルでは閉塞をきたしたが, 8Fr. 栄養カテーテルでは閉塞は認めなかった. 便性の変化による排便時の不機嫌が出現したが, 水分摂取量の増加により改善した.

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