日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
トラネキサム酸投与に伴う経リンパ水分吸収量の抑制が, 除水不全の改善に寄与したと考えられる腹膜透析患者の1例
吉村 和修寺脇 博之瀬戸 一彦長谷川 俊男高橋 創早川 洋横山 啓太郎山本 裕康中山 昌明重松 隆川口 良人細谷 龍男
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 38 巻 5 号 p. 1221-1225

詳細
抄録

症例は70歳男性, 原疾患不明の末期腎不全にて平成13年5月血液透析開始となった. 心機能低下による透析困難症にて平成14年6月27日当院に紹介入院となった. 同7月2日, 血液透析療法からCAPD療法へ変更したが除水不全を認め体重コントロールが困難であった. 腹膜平衡検査 (peritoneal equilibration test: PET) では腹膜透過性の亢進 (D/P Cr=0.81) が認められた. トラネキサム酸250mg/日の経口投与を開始したところ透析液処方内容に変更はないにもかかわらず-日除水量は-600mLから+400mLと明らかな改善を認めた. この時腹膜透過性に変化は認められなかった (D/P Cr=0.89) が, トラネキサム酸投与前後で行ったtechnetium-99m-human serum albumin diethylenetriamine: 99mTc-HSADを用いたリンパ吸収量の測定では, 投与前343mL/4hから投与後264mL/4hと減少を認め, トラネキサム酸の投与に伴う除水量増加の主因は経リンパ水分吸収の抑制であることが推察された.
腹膜透析患者の除水不全症例におけるトラネキサム酸の除水能改善についてはリンパ吸収量の抑制がその機序として考えられている. しかし実際に経リンパ水分吸収量の抑制を直接証明した臨床例の報告はなく, 貴重な症例と考え報告する.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事
feedback
Top