日本透析医学会雑誌
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維持透析患者にみられた特発性小腸穿孔の1例
早原 信行榊原 敏彦清水 貞利石井 啓一上川 禎則金 卓杉本 俊門小林 庸次
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2006 年 39 巻 3 号 p. 203-206

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抄録

維持透析患者にみられた特発性小腸穿孔の1例を経験したので報告する. 患者は1994年より閉塞性腎不全のため維持透析施行中の70歳女性で, 2004年2月5日腹痛が出現し, 翌日の透析時, 同症状がさらに増悪し, 筋性防御, Blumberg徴候が陽性となったため救急入院した. 腹部単純X線立位像および腹部CTにて横隔膜下に腹腔内遊離ガス像を認め, 消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断し緊急開腹術を施行した. 全身麻酔下に開腹すると, 空腸に約10mmの穿孔を認める以外, 腹腔内に異常が認められず, 穿孔部を含めて長さ5cmの空腸を切除し, 小腸端々吻合術を行った. 術後経過は順調で同年3月12日に軽快退院した. 切除部の病理組織では出血性壊死を伴った穿孔がみられたが, ほかに虚血性, 慢性炎症性, 悪性変化など認めなかった. 穿孔の原因を特定する所見が認められず特発性小腸穿孔と診断した. 維持透析患者の特発性小腸穿孔は文献的にまれであり, 重篤な合併症の予防のためには即刻の開腹術が必要であると考えられる.

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