日本透析医学会雑誌
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維持透析患者における睡眠呼吸障害の特微および関連因子の検討
増田 貴博村田 光延本間 寿美子岩津 好隆小倉 学桜井 祥子島田 和幸草野 英二浅野 泰
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2006 年 39 巻 4 号 p. 253-259

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抄録

睡眠呼吸障害 (sleep disordered breathing; SDB) は, 高血圧や虚血性心疾患, 脳血管障害など生命予後を左右する臓器疾患との関連があり, 腎不全患者では非常に高頻度であるといわれている. しかし, 国内では透析患者のSDBの検討は十分に行われていない. 今回われわれは, 維持透析患者におけるSDBの疫学および関連因子について検討した. 対象は, 維持透析中の101名 (男性51名, 女性50名), 透析法はHD 96名, HDF 3名, CAPD 2名, 原疾患は糖尿病41名 (40.6%), 非糖尿病60名, 平均BMIは22.4±5.2であった. 全対象患者に, 自宅での終夜パルスオキシメータを透析施行日から2日間連続で実施し, 合わせて睡眠アンケートも行った. この検査でSDBと診断した42名に簡易ポリソムノグラフィ (PSG) を追加施行した. パルスオキシメータの結果から, 原疾患別のSDB頻度, 測定日による違い, 肥満度・日中の自覚症状との相関について調べた. さらに, 貧血や心胸比などとの関連性も検討し, PSGによる型分類も行った. SDBの頻度は51.5%と高頻度で, 糖尿病では71%と極めて高い割合を示した. 測定日による差はなく, 肥満者の頻度は有意に高かったが, 中等症以上のSDBの頻度に有意な差はなかった. PSGの結果から71.1%で中枢型の無呼吸イベントが含まれていた. 関連因子についての検討では, 重症のSDBほど心胸比が大きく, 貧血が強い傾向にあったが, 透析間体重増加率, 尿素窒素, 血清Cr値, 血清Alb値, intact PTHとの関連はみられなかった.
透析患者でのSDB有病率の高さと中枢型無呼吸イベントの多さが示され, 心胸比・貧血との関連もみられた. このことから, 透析患者でのSDBが一般人とは異なる機序により発症している可能性が示唆された.

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