抄録
特発性心室細動の一つとして,下方・側方誘導に早期再分極を呈する早期再分極症候群(異常J波)が報告されている.下方・側方誘導の早期再分極は,健常者では3~5%にしか認められないのに対し,Brugada症候群,QT延長症候群を除外した特発性心室細動では31~60%に認められるとされる.その他,健常者や若年アスリートに認められる早期再分極と鑑別するための診断基準として,II,III,aVF,I,aVL誘導における0.1mV以上のJ点上昇の有無があげられる.早期再分極所見は,副交感神経興奮,β遮断薬,徐脈によって増強し,イソプロテレノール,キニジン,ジソピラミド,心房ペーシングで減少する.これらの変化はBrugada症候群における変動と似ているが,Na+チャネル遮断薬による増強は認められない症例も多い.本症候群がBrugada症候群の亜型であるのかどうかをはじめとして,その詳細はいまだ不明である.