抄録
症例は濃厚な突然死家族歴を有する71歳男性.発熱ならびに植込み型除細動器(ICD)作動で緊急入院となった.中学生の頃から脚ブロックを指摘され,54歳時に失神歴あり,64歳時に心室細動(VF)から心肺停止となり蘇生された.安静時12誘導心電図では完全右脚ブロック(QRS幅170msec, V1, V2にノッチあり)を認め,加算平均心電図では遅延電位陽性であった.心エコー,心筋シンチグラフィー,心臓MRI,心筋生検では特記すべき異常を認めなかったが,ピルジカイニド負荷にてV2にcoved型の心電図変化を認め,Brugada症候群または不整脈源性右室心筋症初期の可能性を考えICD植込みを行った.その後6年間状態は安定していたが,平成21年9月頃より発熱を契機に肝酵素上昇,VF発作を認め緊急入院となった.肝酵素,炎症反応上昇認めるものの,各種検査でも熱源不明であり,高熱時にVF発作を認め不整脈コントロールに難渋した.VFの原因となった基礎心疾患の診断や,発熱時のVFへの対応なども含め興味深い1例と考えられたため報告する.