2025 年 45 巻 1 号 p. 5-14
疾患iPS細胞を活用することで,患者病態の試験管内での再現や疾患メカニズムの解明,ヒトモデルを用いた治療薬の開発が可能になっている.本総説では,我々が取り組んできたティモシー症候群やQT延長症候群1型,2型の疾患iPS細胞を利用した疾患メカニズムの解明と既存薬の再開発について紹介する1).本研究によって,鎮咳薬のデキストロメトルファン(製品名:メジコン)がQT延長症候群を改善することを患者由来iPS細胞とマウスモデルを用いて見出してきた.その作用メカニズムとしては,シグマ非オピオイド受容体1が新たなキープレーヤーとなり,薬剤処理によるシグマ非オピオイド受容体1の活性化によりCDK5やCa2+,K+チャネルと直接相互作用することによってチャネル機能が回復し,分化誘導したiPS細胞由来心筋細胞における活動電位持続時間の短縮が起こることが示唆された.本総説では,そのメカニズムとともに詳細に解説する.