日本環境感染学会誌
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原著・短報
滋賀県感染制御ネットワーク事業における耐性菌サーベイランス
—基質拡張型β-ラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌について—
西尾 久明末吉 範行山元 桂古川 晶子竹村 美和芳尾 邦子中村 寛子井上 徹也
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2009 年 24 巻 3 号 p. 170-176

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抄録

  2006年10月から12月までの3ヶ月間に滋賀県感染制御ネットワークに参加の32施設から分離されたEscherichia coli 1,650株,Klebsiella spp. 659株およびProteus mirabilis 241株についてESBLの調査と地域における耐性菌サーベイランスのありかたについて検討するためアンケート調査を行った.Clinical Laboratory Standards Institute (CLSI) Document M100-S16に従いESBLの確認を行ったところ,ESBLはE. coliで55株(3.3%),Klebsiella spp.で8株(1.2%),P. mirabilisで40株(16.6%)が陽性となった.耐性遺伝子型についてE. coliではCTX-M9型が28株(50.9%)と最も多く,P. mirabilisは40株すべてがCTX-M2型であった.RAPD法を用いた分子疫学的解析においてE. coliでは3施設がそれぞれの施設において同一パターンを示し,施設内での拡散が示唆された.P. mirabilisでは5施設から検出された33株が同一パターンを示し,滋賀県下での拡散が示唆された.アンケート調査からは,多くの施設(29施設)において自施設でのESBL耐性菌の状況を把握し,それに基づき感染対策の改善が行われたことが判った.今回の調査により,施設ごとの耐性菌の出現頻度と滋賀県でのESBL拡散の実態が把握でき,各施設における感染対策を見直す契機になったと考えられ,地域における耐性菌サーベイランスの重要性が認められた.今後も,施設内はもとより,地域を含めた感染制御の取り組みが必要と考えられる.

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© 2009 一般社団法人 日本環境感染学会
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