2009 年 24 巻 3 号 p. 177-184
2006年6月23日に当院産科外来を受診した患者5名より採取した頸管内容物から同じ生化学的性状を示すRalstonia pickettiiを分離した.6月26日に感染対策チーム(ICT)が産科外来リンクナースに聞き取り調査を行った結果,産科外来初診室1に設置された1台の局所洗浄装置イルリガトールを患者5名の外陰部洗浄ならびに膣内洗浄に使用していたことが判明した.環境細菌調査の結果,局所洗浄装置イルリガトールの先端ノズルから採取した自家調製0.025 w/v%塩化ベンザルコニウム液より,患者由来5株と同じ生化学的性状を示すR. pickettiiを分離した.患者由来5株ならびに先端ノズル由来1株は,Random amplified polymorphic DNA polymerase chain reaction (RAPD)法による分子疫学解析の結果から同一起源株であることが強く示唆された.したがって,本事例は,局所洗浄装置イルリガトールの先端ノズル内にR. pickettiiが定着し,自家調製0.025%w/v%塩化ベンザルコニウム液を介した伝播事例と推察した.