2011 年 26 巻 6 号 p. 392-400
2003年4月から2010年3月に臨床分離された緑膿菌6587株について,抗菌薬の使用量と抗菌薬感受性および交差耐性の関係を調査した.
調査期間中にMBLs産生株は22株(0.33%)分離され,MDRPは2007年度に尿から3株分離された.MBLs産生株の分離は,2004年度4株(0.4%),2005年度8株(0.8%),2006年度6株(0.7%)で,この期間に集中していた.カルバペネム系,アミノグリコシド系,ニューキノロン系抗菌薬の総AUDは経年的に増加し,特にMEPM, AMK, CPFXの増加が著しかった.
抗菌薬感受性は感性,中間値,耐性の3段階で判定し,2006年度の前後3年間におけるAUDと感受性を比較した.AMK, IPM/CS, MEPM以外の抗菌薬は,AUD増加に伴い,耐性株が有意に増加していた.AMKは耐性株と中間値株の増加に差がなかったが,IPM/CSとMEPMは中間値株が有意に増加し,CAZでは耐性株と中間値株の両方が有意に増加していた.
MEPM耐性株がIPM/CS耐性株および中間値株と交差耐性を示す割合は,2003年度から2006年度まで100%であったが,2007年度から交差耐性を示さない株が分離された.MEPMのAUD増加による影響が示唆された.IPM/CS耐性株より,MEPM耐性株は,CPFX耐性株と交差耐性を示す割合が有意に高かった.緑膿菌の抗菌薬感受性は,殆どの抗菌薬がAUDと密接に関係していた.感受性を長期に監視する上で,AUDは重要な因子と考えられた.