日本環境感染学会誌
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原著論文
当院におけるカンジダ性カテーテル関連血流感染症の背景因子の解析—ICTの合併症対策への取り組み—
今泉 貴広田中 久美子大川 浩永松田 雅光島崎 豊奥村 明彦
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2012 年 27 巻 1 号 p. 8-12

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抄録

  カンジダ属菌によるカテーテル関連血流感染症は難治性であり,眼内炎などの合併症を発症することが知られている.当院における血液培養陽性例の全例調査から,2008年4月~2010年9月までの間に新たに発症した血管内留置カテーテルにおけるカテーテル関連血流感染症(CR-BSI)に関して,起炎菌の割合,背景因子,合併症へのICT介入についての検討を行った.
  調査期間を通じてCR-BSIは72件あり,このうちカンジダ属菌感染によるもの(カンジダ属菌感染群)が28件,細菌感染によるもの(細菌感染群)が44件であった.それぞれの背景因子を比較したところ,入院期間4週間以上,発症前4週間以内の広域抗菌薬投与,完全静脈栄養の3つの因子が有意にカンジダ属菌感染群で多かった.さらに,カンジダ属菌感染群においては,3つのうち2つ以上の複数の因子を有する患者の割合が有意に高率であった.適切な経験的治療までの日数については,細菌感染群では1.5±0.6日であったのに対し,カンジダ属菌感染群では2.7±0.7日と有意に遅れた.
  また,眼内炎は調査期間内に5件発症したが,治療までの期間は非眼内炎群と眼内炎群間で差はなかった.カンジダ属菌感染におけるICT介入は20/28件(71%)であったが,治療開始までの期間は,介入した場合と非介入の場合の両群間で有意差はなかった.血液培養陽性が判明した直後からICTが早期にかかわるよりも,カンジダ属菌感染のリスクが高い場合はより早期から治療を開始することを検討するべきかもしれない.

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© 2012 一般社団法人 日本環境感染学会
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