2012 年 27 巻 3 号 p. 183-188
医療施設では擦式アルコール製剤を用いた手指消毒が推奨されているが,実際には製剤の使用量が規定より少なく,指先を擦り込んでいないと報告されている.そこで手指消毒時の指先擦り込みの有無,製剤使用量の違いが除菌効果に影響を与えるか検証した.
研究協力者は指先擦り込み実施群と指先擦り込み非実施群に分け,それぞれ製剤を規定の3 mLと半量の1.5 mL使用し手指消毒を行った,手指消毒前後の細菌をスタンプ法により指先,指中央,手掌から採取し除菌効果の差を検証した.
指先擦り込み非実施群では,指先の除菌率が指中央,手掌と比較して有意に低かった(製剤使用量3 mL, 1.5 mLともにp<0.001).また,指先擦り込み非実施群は,実施群と比較して指先の指数減少値が有意に低かった(製剤3 mL使用時p<0.01, 1.5 mL使用時p<0.001).指先擦り込み非実施群では,製剤使用量が1.5 mLの場合,3 mL使用した場合と比較して指先の指数減少値が有意に低かった(p<0.01).指中央,手掌では製剤使用量の違い,指先擦り込みの有無による除菌効果の差はなかった.これらより,手指消毒時に指先を擦り込まなければ除菌効果が低下することを認識し,指先擦り込みを意識して手指消毒を行う必要があるといえる.さらに,製剤使用量を規定の半量以下とすると,除菌効果がより低下することを認識しておく必要がある.