抄録
地域での抗菌薬耐性菌の拡がりが懸念される中,患者の直接ケアに関わる看護師が連携し地域全体で適切な感染管理が実践されることが重要である.そこで,ある地域の医療施設で感染管理に携わる看護師による感染管理ネットワークを構築するために医療施設の感染管理の実態と看護師による感染予防ネットワークへのニーズを調査した.104施設(有効回答率19.6%)を無床診療所,有床診療所,病院の3群に分けて分析した.感染予防対策マニュアルに標準予防策について記載している無床診療所は22.9%,有床診療所は60.6%,病院は86.1%であり,手指衛生の方法や実施のタイミングについては無床診療所は45.7%,有床診療所は54.5%,病院は86.1%が記載していた.
看護師による感染管理ネットワークについては多くの感染管理担当看護師が必要性を感じていたが,無床診療所では多忙で時間が取れないといった理由から,参加の希望は71.4%に留まっていた.感染管理ネットワークへ求めるニーズは無床診療所,有床診療所,病院では異なっていた.
今回の結果から中小規模医療施設では感染管理体制の整備の遅れが推察された.インターネットの活用などマンパワーが不足している中小規模医療施設もネットワークに参加しやすい環境を整え,それぞれの施設が情報交換や助言ができるようなネットワーク体制を構築することが必要と考えられた.